Believe 〜大切なこと〜
これは、後日談である。
「明日も来るからな」
そういって俺は病室を出た。
さて、病院の先生から和也の深刻な容態を聞いて今日で一週間ぐらいになるのだが、先生が再び、話があると言ってきた。ビルに反射された光を背中に受けて、俺は自販機で飲み物を買う患者をぼうと見つめていた。
「大野様、大野様?」
「あ、はい、俺が大野です!」
ハッとした俺はいつの間にか寝ていたらしい。看護師に起こされて、俺は急いで部屋に向かった。
「どうぞ、お掛け下さい」
「どうも」
少しの沈黙。先週あんなことを言われたばかりだから、さすがに緊張する。もしかしたら手術とかになるかもしれなくて。
「和也は……」
先生は顔をしかめている。恐かった。自身のこぶしを強く握り締めた。背中は大量の汗で濡れていて、少し寒いぐらいだ。
しかし、先生の口から出た言葉は予想の外の外であった。
信じるって、すごい事だ。
奇跡を引き起こす引き金は信じる事である。それは他人のことでも自分のことでも同じ。
何かうまくいかないことがあるかもしれない。人はたまに起きてもいない未来に絶望してしまうことがある。これは仕方がないこと。それに、そういう風に不安になるのは、少なからず自分が未来をそうだと信じてしまっているから。つまり、結局は自分が原因である。
嫌な未来があるってことは、希望する未来もあるということ。こうであって欲しいという目標があることって素晴らしい。自分が行くべき場所がわかっているって、すごく頼もしい。だから、何をすべきかなんてわかりきっているんだ。
自分が望む未来があるならば、自分に夢があるならば、まず信じてみようじゃないか。それが自分の武器になる。誇りになる。勇気になる。叶ったときの喜びになる。
本当だよ。
信じてみてよ。
始めは少し難しいかな。でも、
道は、そこから開かれるんだから、さ。
「それが……。和也君、先週から急に回復しているんですよ。手術を検討していた事もあったのですが……不思議ですね」
Believe 〜大切なこと〜
−完−