Believe 〜大切なこと〜
「秘宝は手に入らなかった。でも二人は手に入れたんだ。二人で協力し合う力を。きっとこれは何よりの宝だったんじゃないか?」
これは小学一年生に理解出来る内容なのか? 『ひほう』の漢字もわからないだろう年頃なのに。今更な疑問を浮かべながらも、和也の顔を見てみる。
和也は満足そうな笑顔を浮かべて頷いた。どうやら自分なりに解釈したようだから、それでいいだろう。第一今の答えは俺が考えた答えで、もしかしたら単に作者がハッピーエンドにしようと無理矢理こじつけた結果かもしれない。それでも和也が満足しているならいいんだ。と、自己満足してみる。
とまあ、いつもこんな感じだ。中々頭の働く奴なので、もしかしたら和也は学校に行ったら賢さでモテるかもしれない。だったら余計に早く病気を治さないと、な。
今日は早めに病室を出た。というのも、今日は病院の先生に和也の容態を聞ける貴重な日である。その時間に遅刻するわけにもいかなかったので早めに和也に別れを告げた。和也は少し寂しそうにしていたが、明日も来ると伝えると晴れやかな顔になった。和也の表情は実にわかりやすいな。
待合室で名を呼ばれるのを待つ。待合室の窓は東にあるが、正面のビルが夕日を見事に反射するため院内は眩しかった。俺は光を背に受けながら、自販機で飲み物を買う患者をぼんやり見つめていた。
俺がいないとき……例えば今って、和也は何をしているんだろう。一応絵本は置いてきているが、殆ど俺と読むので面白くないだろうけどなぁ。あ、それとももう一度絵本を読んで俺と過ごした時間を思い返しているのだろうか。それなら嬉しいな。じゃあ書店の絵本を買い占めてこようかな。いや、さすがにそれはないか。飽きられても困るからな。今度は一年生向けの普通の本を持ってこようか。あ、それより教科書だな。俺がもっと賢かったら勉強を教えてやれるのに……。いや、一年生の内容ぐらい俺でも大丈夫か? ……うん、今度小学校に行って相談しよう。出来るならちゃんと先生に教わった方がいいだろう。それで俺も隣で教わろう。……なんだか情けないな、俺。