Believe 〜大切なこと〜
 音と共に崩れる自分自身。そんな俺を嘲笑うお前は死神か? 俺から和也を奪うのだろう?!

 ――カラカラカラ……

 背後から音がした。合わせて足音。そうか、死神だから骨になった人を連れているのか。だからそんな音がするんだな。そうか、そう――



「お兄ちゃん」



 暗闇に差し掛かる光。背後にいたのは、俺の世界の光、和也だった。どうやらカラカラという音は和也が連れている点滴のキャスターの音だったようだ。

 続いて響き渡るのは、光のない廊下には似合わない和也の明るい声である。

「わぁ、ちょうどよかったよ。お兄ちゃん、僕眠れなくて散歩していたんだ。絵本を読んでくれない?」

 眠るという言葉にただならぬ恐怖を感じた。背筋にぞわりとした感覚が駆け抜ける。

 しかし、和也が笑顔でこちらを見ている。しっかりしろよ、自分。俺は和也のたった一人の兄じゃないか!

「よし、いいぞ。今日は俺も病院に泊まっていくよ」

「本当? わーい!」

 無邪気な和也の笑顔に俺も笑顔になる。この病院は手続きさえすればその日一晩泊まることが出来るので、俺はすぐに手続きを済ませ、カラカラと響くキャスターの音を聞きながら和也と手を繋いで部屋へ向かった。

 ――あとどれぐらい、こういう時間を過ごせるのだろう。

 
 そんなことを考えながら。





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