甘く、甘い、二人の時間



少しの沈黙の後。



「菫…もう、俺と付き合うのやめたい?」



拓海は真っ直ぐに私を見つめながら、とんでもない言葉を呟いた。


その表情はとても悲しそうで。

今にも別れ話でも切り出しそうで。




「何で?そんなわけないじゃない。どうしてそんな事言うの!?」



涙を拭う事も忘れて、ついむきになって否定した。




「俺は仕事ばかりで、上手く時間も作れないからなかなか会えないし。だけど菫はいつだって笑顔でいてくれるから、俺達は大丈夫だって勝手に思い込んでた。

でも、違うよな?大丈夫じゃないから、元彼なんかに送って貰ってて、何があったのかも説明出来ないんだよな?だから、泣いてるんだよな?」


「……」



何て言えばいいのか、言葉が見つからなかった。


だって康介に送って貰った事も、大丈夫じゃない事も事実だから。



言葉を詰まらせる私を見て、拓海はため息を吐く。



「菫はさ、俺に会いたいとか、思ってくれないの?たまに時間が出来た時に連絡しても「いつも睡眠時間が少ないからゆっくり休んで」とか言ってくれるから、菫の言葉に甘えてた。けど、その反面寂しかった。確かに会えない原因を作ってるのは俺だけど。だけど、菫を想う俺の気持ちと、俺の事を想う菫の気持ちにはかなりの差がある気がして――」

「!!違う、違うから!」



拓海の言葉を遮る様に、その胸に抱きついた。





私は何て馬鹿なんだろう。

拓海に心配かけたくない一心で、ずっと我慢してたのに。


でもそれが、こんなに拓海を悲しませていたなんて。

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