甘く、甘い、二人の時間
「俺、何かした?……ちょっと待って、
駅って5時前?もしかして、俺の事見かけた?」
「…うん。」
「何だよ、声かけてくれれば」
「分かってる!」
「は?」
「声かければ、拓海はちゃんと応えてくれるって、分かってる。…でも、出来なかったの。足が前に出なくて、声が出なくて……ただ、涙がどんどん出て…」
どろどろした苦しくなる感情は、今だって簡単に甦ってきて、簡単に私の胸を支配する。
せっかく止まった涙も、簡単に溢れてきて頬を伝う。
「…菫、泣いてたのは、俺のせい?」
拓海は流れる私の涙を指で抜い、とても悲しそうな表情をした。