甘く、甘い、二人の時間
「ゆっくりでいい。ゆっくりでいいから話してくれ。」
拓海は囁く様に言いながら、私をその胸に包み込む。
拓海の鼓動が聞こえて、温かくて。
ささくれていた気持ちが少しずつ穏やかになっていく。
「…あったかい。」
「……ん?」
「私、拓海不足だった。」
「え?」
「拓海の仕事の邪魔したくないって、いい彼女でいたいって、自分に言い聞かせて意地張って…。会いたいのに、言わなかった。
そうしたら、昨日の電話で……拓海の隣から女の人の声がして。」
「女の人って、ああ、あいつは会社の」
「分かってるよ。ただの後輩か部下だろうって、頭では理解してるの。だけど……私はずっとずっと拓海と会ってないのに、この人は毎日一緒にいるんだとか色々考えちゃって、もやもやして。自分の感情がコントロール出来なくて、上手く話が出来るかわからないから、慌てて電話を切って……」
「…それってさ、やきもち?」
真剣な目差しで聞き返すから、何だか突然恥ずかしくなってくる。
「///……馬鹿みたい、でしょ?」
そう、ただのやきもち。
冷静になってみれば泣く程の事じゃない。
「…確かに、馬鹿かもしれない。」
「え…」
馬鹿かもしれないなんて言われるとは思わなかったから、思わず拓海を見つめてしまった。