甘く、甘い、二人の時間

スーツのままだったから、一度マンションに寄って貰った。


俺の着替えを待つ間、菫は鼻歌を歌いながらスマホで「映画情報」を検索中。


「観たい映画あった?」


「ん~、あれもこれも気になって、分からなくなってきた。」


「まだ時間あるし、悩んでていいよ。それとも、映画は明日にする?」



何の気なしに言ったのに、菫は驚いた顔で俺を見る。



「…どうした?」


「明日も…一緒にいられるの?」


「もちろん。」




そう言って笑うと、菫はとても嬉しそうに抱きついて来た。



そんな態度されたら、ついつい押し倒したくなる――。


いや、我慢、ガマン、がまん。


その可愛い首筋に軽くキスを落とし、そっと菫の身体を離す。



「そんなに喜んで貰えると、俺も嬉しいよ。」



目を見て微笑んで伝える事で、菫の身体を離した事が不自然にならないはず。


もちろん真剣に伝えたいからした事だけど、ぴったり抱きつかれると…こう、理性を総動員させなきゃならないから、大変なわけだ。



大事な菫に"身体だけが目的なの?"なんて思われるわけにはいかないし。


本当、男は苦労する。

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