甘く、甘い、二人の時間
そして久しぶりのデートで菫の選んだ恋愛映画を観た。
俺は正直隣で涙ぐむ菫を眺めてしまったけど。
「わぁ…きれい。」
映画館を出ると空はすっかり暗くなっていて、街はイルミネーションで光輝いていた。
街路樹はツリーの様に輝き、小さな公園は光の庭園へと姿を変える。
見慣れた街が美しく輝いていて、つい足を止めてしまう。
「すごいねぇ…もう、こういう季節なんだねぇ。」
菫は瞳をキラキラさせ、うっとりしながら呟く。
「確かに、もうすぐクリスマスだな。」
本当はしっかりクリスマスを意識しているくせに、あえて知らなかった風に言葉を返した。
「…今年も――…」
「ん?」
「ううん、何でもない。」
明らかに何かあるのに、ごまかすのが下手だな。
たぶんクリスマスの予定だろうけど、それは今は言わない。
後のお楽しみ。
ついニヤケそうになる顔を必死にこらえてから菫の手をとる。
「そろそろ夕飯食べない?」
「あ、うん。何にする?」
「行きたい店があるんだけど、いい?」
「うん。いいよ。」
そうやって何気ない会話で菫を連れて行った。