甘く、甘い、二人の時間

そして久しぶりのデートで菫の選んだ恋愛映画を観た。


俺は正直隣で涙ぐむ菫を眺めてしまったけど。






「わぁ…きれい。」



映画館を出ると空はすっかり暗くなっていて、街はイルミネーションで光輝いていた。


街路樹はツリーの様に輝き、小さな公園は光の庭園へと姿を変える。

見慣れた街が美しく輝いていて、つい足を止めてしまう。



「すごいねぇ…もう、こういう季節なんだねぇ。」



菫は瞳をキラキラさせ、うっとりしながら呟く。



「確かに、もうすぐクリスマスだな。」



本当はしっかりクリスマスを意識しているくせに、あえて知らなかった風に言葉を返した。



「…今年も――…」

「ん?」

「ううん、何でもない。」



明らかに何かあるのに、ごまかすのが下手だな。


たぶんクリスマスの予定だろうけど、それは今は言わない。


後のお楽しみ。



ついニヤケそうになる顔を必死にこらえてから菫の手をとる。




「そろそろ夕飯食べない?」

「あ、うん。何にする?」

「行きたい店があるんだけど、いい?」

「うん。いいよ。」





そうやって何気ない会話で菫を連れて行った。

< 147 / 209 >

この作品をシェア

pagetop