甘く、甘い、二人の時間
そして思い出した。
コートのポケットにある、小さな箱。
ゴクン……
生唾を飲み込み、軽く息を吐いた。
片手で中身を取り出す。
それから、俺の背中にまわっている菫の左手を取り
指を絡めて、ゆっくり、見えない様に菫の背中へ誘導する。
不思議そうに俺を見る菫に優しく微笑み、その指にダイヤをはめる。
「――これ…」
驚くその表情が、堪らなく可愛い。
いつもなら、我慢出来ずにキスをしてしまうだろうけど、 今は駄目だ。