甘く、甘い、二人の時間
「俺が頭を下げた事を気にして、一人で謝りに来てくれた。『お客さんも沢山いたし、従業員も見ていたのに、すまなかった』って、わざわざ俺に向かって頭を下げて。」
「……」
拓海。
店長という立場の康介を気遣って、気にしていたんだ。
それから、拓海は自分の会社の人達にここの居酒屋を紹介しているらしい。
「拓海さんのおかげでお客様が増えて、助かってる。」
「…そっか。」
拓海にありがとうって伝えなくちゃ。
薬指のリングを見ながら、無性に拓海に会いたくなった。
「なぁ菫?」
「何?」
「…悲しいけど、拓海さんは俺じゃ敵わない位のいい男だから、絶対離すなよ?しっかり掴まえておけな?」
少しだけ悲しそうな表情を浮かべ、私に微笑む康介。
ズキッと痛む良心がバレない様に笑い返した。
「ありがとう♪」