甘く、甘い、二人の時間
「失礼だけど、家は近いですか?」


「え…?」


彼女のえ?からは、明らかに警戒心を感じるが、仕方がない。

初対面の男性に素直に答えていいものか、迷っているのだろう。



だけど俺としても、せめてもの償いをと考えていたから、引き下がるわけにはいかない。


「すぐそこの地下鉄から帰るの?」

「……え、あの」

「それともJR線?」


「……は、はい。」



俺の勢いにたじたじになりながらも、彼女はポロポロと答えてくれた。


「そう、ちなみに30分位で帰宅出来る?」



「あの!私、」



彼女は必死に反発するから、多分ビンゴだろう。

遠いなら遠いと素直に答えた方が、送っていくなんていう展開にはなりにくいし。



「わかった、ごめん変な事聞いて。」



俺は彼女に謝りながら、道端でタクシーを拾った。






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