甘く、甘い、二人の時間
「菫?どうした?」
「え?!何でもないよ。」
私ったら、いつの間にか画面じゃなく拓海の顔を見つめていたみたい。
まだ数える程しか触れていないその手に、触れて欲しいと願ってしまう。
それから、キスして欲しいと願ってしまう。
付き合いだして月日は経つけれど、忙しい拓海に会えるのは想像以上に大変で。
こうしてまったり過ごす事なんか、今の私には奇跡に近い。
何年も連れ添った夫婦なら、こんなラブシーンにいちいちドキドキせずにストーリーに集中出来るのかも知れないけど。
今の私には絶対に無理。
だからといって動揺してるのも、妙に意識してるのも知られたくないわけで。
いまいち可愛くなれない私は、素直な欲望には従えない。
自分の気持ちにすら、意地を張ってしまう。