甘く、甘い、二人の時間
「……ちょっと、菫?」
「…!!」
突然肩を叩かれ、驚いて振り返ると、同僚の莉乃が立っていた。
「ぼけっとし過ぎ。…そんなに窓の外ばかり見てても、拓海さん通らないよ?」
「…そう、だけど…」
呆れながら私を見下ろす莉乃に、反論する事も出来ない。
こんなに近くで働いているはずなのに、この一ヶ月、拓海の姿すら見てない。
でも、つい窓の外に目がいってしまう。
いつかの様に会社のビルの前で、携帯片手に立っているかも…。
口パクで『愛してる』って言ってくれるかも…。
なんて、淡い期待を抱いてしまう。