誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
「すみません、あの、私――…、」
『いいよ。待ってるから。』
「……はい。」
そんなに、私に話すことがあるのかな…。
もう、観念した方が良いよね、絶対…。
「…帰ろっか。秀人くん。」
『うんっ!』
秀人くんの笑顔に、少し、勇気をもらう。
やっぱり子供たちはすごいなぁ…。
「秀人くん、どうしてあのお兄ちゃんに“アイツ”、なんて言葉使ったの?」
秀人くんの病室に向かいながら、秀人くんに問いかける。
『だって…、』
「ん?」
急に、しおらしくなってしまった秀人くん。
聞かない方が良かったかな…?
『だって、…お姉ちゃん、とられちゃうっておもったんだもん…っ』
「秀人くん…。」
こんなに、秀人くんは私のことを想ってくれて。
秀人くんの言葉が、すごく私の心に響いて行った。