誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―



『スースー…』

「寝たかな…?」


病室まで泣いている秀人くんを連れて来て、ベッドに寝かせて、絵本を読んでいると、スヤスヤと寝た秀人くん。

泣き疲れちゃったのな。

…っと、早く着替えなきゃ。

新様が待ってる…!


「おやすみ、秀人くん、」


気付けば、もう9時になろうとしていた。

秀人くんの頭を撫でて病室を出たあと、すぐに私はナースステーションに行って着替えを済ませた。


――「すみませんっ!」


夜勤のスタッフに新様のことを聞けば、面会時間が過ぎているから正門に移動してもらったと聞いて、すぐに新様のもとに向かった。

新様は少し冷え込んだ夜空の下、私を待ってくれていた。


『ぁあ、やっと来た。』

「ごめんなさいっ…!寒い中待たせちゃって…、」

『ん、ううん。全然。…お腹空いてない?』

「え、」


新様の優しさが心に滲んで、切なくなる。

でも、まだ泣くところじゃないと、自分に渇を入れた


『ご飯食べにいかない?』

「ぇ…っと、」

『行こう!ねっ』

「あっ、ちょっ…!」


返事に困っている私に、新様は私の腕を掴んで歩いてく。

こんな強引な新様、知らない…。







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