誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
なんだか、心にぽっかり穴が開いた感じ。
やっぱり強引な新様に引かれながら私は思った。
どうして新様は私を待ってくれていたの?
どうしてそんなに必死そうな顔をしているの?
どうして…私なんかに構うの。
もう私は泣きそうで、胸が苦しくて、一人になりたくて。
だけど、私の腕を掴んでる新様の手を振りほどくなんてことは出来なくて。
私はいつから、こんなにも弱くなってしまったんだろう。
婚姻している新様を前にして、こんなにも…好きって気持ちが溢れてる。
新様は結婚してるんだって、分かってるはずなのに。
とっくの昔から、私には出る幕なんてなかったんだって、今日のことで思い知ったはずなのに。
それなのにどうして…ッ
「…新様っ」
『!…ん?』
「やっぱり…行けません。」
『・・・え?』
私は分かってしまった。
これ以上、新様のそばにいると私は――…
「新様とは、行けません…ッ」
私は自分じゃどうしようもないくらい、
新様を愛してしまっているんだって…――。