誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
「ゎ、たし…まさか……」
昨夜の記憶の中で、家に帰ってきた記憶はない。
それじゃ、ここって…――
ガチャ、
『ぁ、おねーさん起きてたんだ。』
「っっ!」
笑顔で入ってきた王子様を見て、冴えた頭でここは王子様の寝室だと分かった。
『おねーさん?』
「ぇっ?ぁっ…ぉ、おおおっ…おはようございますっ!」
『クスッ…おはよう。』
噛みまくった私に、笑いながら応えてくれる王子様。
朝からなんてお優しいの……。
『おねーさん、朝ごはん食べる?』
「えっ!?ぃゃ、でもっ…!」
『遠慮しないで、おねーさんの分ももう作っちゃったんだから。食べてよ。』
「はっ…はひっ…喜んで!」
心臓はドッキドキでバックバク。
返事をするにも一苦労。
寝室を出て、鼻を掠める美味しそうな匂いに、昨日何も食べていなかったためか、急に空腹感が増した。