誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
――「あのっ、ありがとうございましたっ…!何から何まで本当にっ!」
朝の朝食タイムを終え、もう王子様のお家に居座る必要もない私は、まず始めに王子様にお礼の一言を。
『そんなに気にしなくていいよー?』
「ぃえっ……今回の件につきましては、ちゃんとしたお礼の方をさせていただきますのでっ!」
『そんなに!?律儀だねぇ、おねーさん。』
「律儀だなんて、そんなっ…!ぁ、それとお着替えのことなんですけれども…―――」
ピリリッピリリッ
私の言葉を遮るように、電話が鳴った。
どうやら、王子様の携帯ではないらしい…ってことは私っ!?
「ぁ、あの私のバックは…ッ」
『ぁあ、…これだよね、』
寝室にあったらしい私のバッグを王子様がとってきてくれ、お礼を言ってまだ鳴り続けている携帯の通話ボタンを押す。
「はい、もしもし、」
『水川さん!?』
「はい、私は水―――」
『秀人くんが大変なのっ!』
「へ?」
秀人君と言えば、一人しか知らない。
まさかと思って、着信相手を確認すると…――
「ふっ、婦長!?」
職場の上司だった。