誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
『そうですけど何かっ!?』
「ぃ、いえ…。」
婦長の周りで子供たちが遊んでるらしく、ノイズが凄い。
ときどき婦長の子供たちへの怒り声も聞こえる。
婦長、極力子供嫌いだからなぁ…。
「……ぁ、それで、秀人くんがどうかしました?」
『そっ、そうよ!あの子、今日、手術前のレントゲンでしょ?それで貴女がいないと行かないって言い出して……』
「ぇえっ…!?」
『それに、佳菜子ちゃんも注射は貴方がいないと嫌って…とにかく!今日は休暇だけど出勤してきて!良いわね!』
プツっ…ツーツーツー
一方的に切られた電話。
あらら…。
私は子供たちに好かれやすいようで、休日の日に出勤することもある。
「あっ、それで、着替えのことなんですけどっ!」
『えっ!?あ、うん、』
「あのっ、私これから病院なので、上着だけ貸してもらえませんか!?」
『えっ…?それは良いけど……』
自分の服がまだ濡れてることは、外に干されてる状況で分かっていたので、服はお借りすることにした私。
確か秀人くんのレントゲンは、10時30分の筈だから……
ここから走って15分。
単純計算して、急がないとまずいと判断した私は、急いで玄関へ。
『これでいい?』
「ありがとうございますっ…!お礼は後ほど…ッてことで失礼します!」
昨日覚えたエレベータのあるところへ走る。
あっ!
忘れちゃいけないことを思い出した私は、また急いで王子様のところへ引き返した。