誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―


『そうですけど何かっ!?』

「ぃ、いえ…。」


婦長の周りで子供たちが遊んでるらしく、ノイズが凄い。

ときどき婦長の子供たちへの怒り声も聞こえる。

婦長、極力子供嫌いだからなぁ…。


「……ぁ、それで、秀人くんがどうかしました?」

『そっ、そうよ!あの子、今日、手術前のレントゲンでしょ?それで貴女がいないと行かないって言い出して……』

「ぇえっ…!?」

『それに、佳菜子ちゃんも注射は貴方がいないと嫌って…とにかく!今日は休暇だけど出勤してきて!良いわね!』

プツっ…ツーツーツー


一方的に切られた電話。

あらら…。

私は子供たちに好かれやすいようで、休日の日に出勤することもある。


「あっ、それで、着替えのことなんですけどっ!」

『えっ!?あ、うん、』

「あのっ、私これから病院なので、上着だけ貸してもらえませんか!?」

『えっ…?それは良いけど……』


自分の服がまだ濡れてることは、外に干されてる状況で分かっていたので、服はお借りすることにした私。

確か秀人くんのレントゲンは、10時30分の筈だから……

ここから走って15分。

単純計算して、急がないとまずいと判断した私は、急いで玄関へ。


『これでいい?』

「ありがとうございますっ…!お礼は後ほど…ッてことで失礼します!」


昨日覚えたエレベータのあるところへ走る。


あっ!

忘れちゃいけないことを思い出した私は、また急いで王子様のところへ引き返した。






< 18 / 192 >

この作品をシェア

pagetop