誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
『あのっ、新さ――』
「黙って。」
『ッ…!!』
いつもの俺なら、今までの俺だったら、女の子にこんな態度はとらないのに。
今はなぜか余裕ってものが1ミリたりともなくて。
きっと今愛実の腕を掴んでるこの手に加わる力も、さっきより強いだろう。
自分がコントロールできない。
誤解を解きたいという思いが、俺の歩幅を広くする。
俺が向かった場所は…――
『っ、ここ…!』
俺のマンション。
『新様、離してっ…!』
「ッ!」
さっきまで黙ってついて来てくれたのに、愛実はマンションの目の前に来ると、突然、抵抗を始めた。
『話ならまた今度…ッ』
何で?
「愛実!」
『ッ!?』
どうしてそこまで嫌がる?
「お願いだから…来て。」
『……っ』
俺はただ――君の誤解を解きたいだけなのに。
君が食事はしたくないって言ったんだよ?