誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
しおらしくなった愛実を連れて、俺はエレベーターに乗った。
俺…大丈夫かな。
突然、不安が俺を襲った。
うまく愛実の誤解を解ける自信がない。
それに…誤解を解いたとしても、俺の今までの態度で、もう嫌われてしまったのかもしれない。
・・・だけど。
俺は信じたい。
少しでも、愛実は俺を想ってくれてるって。
あんなにも誤解して、
その度に辛そうにしていて、
あの時見せた涙も――…俺のことを、想ってのことだって
青ざめた顔をして一点を見つめている愛実に、俺は…今は、何もできなかった。