誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―


落ちていた夕日も沈んで、辺りは真っ暗。

涙で視界が揺れるなか見た満月は、綺麗で――そして、儚かった。


すぐ忘れることなんてできないよ。

好きだったんだもん。

――ぁあ、これが“重い”って言うのかな。


その時だった。

――ポツッ

「…?」


雨粒…?


ポツッポツッ

「まさか……」


ザーーッ


勢いよく降っていた雨。

今日、雨降るなんて言ってた?


…そうだ、今日は急患が出て天気予報見れなかったんだ。


大雨のなか、私は動こうとしない。

明日は幸いにもお休み。


今はただ、私に共鳴してくれているようなこの雨に、打たれていたかった。





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