誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
「申し遅れましたが、私、水川 愛実と申します。」
ぺこりとお辞儀。
『あゆみ?』
「はい、名字でも名前でも好きなようにお呼びください。」
『じゃぁ、“あゆみん”で。』
「………へ?」
一瞬、幻聴のようなものが聞こえた気がした。
えーっ…と…、“あゆみん”…?
『だから、“あゆみん”って呼んでいい?ってか、もうおねーさんは“あゆみん”だから。』
「………はっ、はぃ…///」
初めて呼ばれたニックネームに胸が高鳴る。
この…聞いた後に決定しちゃう感じがたまんないよね!
『ぁ、そうだ。あゆみんに服返さないとね。』
「えっ?ぁ、ありがとうございますっ!」
『クスッ…全然いいよ。俺とあゆみんの仲じゃない。』
「っ…///」
寝室の方に消えて行く新様を見ながら赤面する。
私の新様の仲って何…?
出来れば今すぐ聞きたいけど、今の関係に名前をつけたくない。
急に新様が遠くに行っちゃいそうで…怖いから。
『はい。これで全部だよね?』
我に返ると、目の前に差し出された服。
あの時、私が寝てしまってる間に私の服を洗濯してくれていた新様。
渡されたのは私の服なのに、新様に渡されただけでプレゼントを渡されたような気がしている私は完全にイッちゃっていると思う。