誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
「もうヤだよ……」
『愛実…』
頭を抱える。
胸が痛い。
息が苦しい。
生きてる心地がしない。
――恋なんて、しなきゃ良かった。
「もう誰も…好きになりたくない……」
いつも恋なんかしないって言うけど、
でも結局は誰かを好きになって、恋をしてた。
だけど、今回は本当に無理。
私は優しさを知ってしまった。
それも、極上の。
もう他に、新様以上に素敵な人なんていない。
だから、長期戦で頑張ろうって思ってた。
思ってたのに……、
もう恋なんて出来ないよ。
『――静かな涙…』
「ぇ…?」
ポツリ、と呟いた裕南に、私はビックリする。
『いつもわんわん泣くのに、今日は静かに泣くのね。』
「っ……」
無表情でそう言った裕南に、私は息がつまる。
だって、苦しすぎて、声なんか出ない…――。