誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
「王子…様?」
『え?』
ポツリ、と呟いた私の言葉を王子様は聞き取れなかったようで?マークを浮かべている。
格好よくて、その上優しいなんて…――、
王子様だとしか、考えられない。
――感激。
その一言しかない。
こんな格好よくて、優しい人、初めてだから――…
また涙が、流れてしまった。
「………っっ」
『ぇえ゛っ…!?ど、どうしたの!?何で泣いてるの…!?』
慌てる姿も格好いい。
さすが…王子様だ。
「ごっ、ごめんなさっ…!ぅ、嬉しくてっ…」
伝う涙を拭いながら、私は必死に弁解する。
「こんなっ…大雨の中で…っ…びしょ濡れな私にっ…声、かけてくれて…っ」
…――嬉しかった。
とても、とても。
さっきフラれたことなんてどうでも良くなるくらい、
王子様に会えて、
王子様が声かけてくれて、
王子様に気にかけてくれたことが…――
嬉しかった。