誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―


「王子…様?」

『え?』


ポツリ、と呟いた私の言葉を王子様は聞き取れなかったようで?マークを浮かべている。


格好よくて、その上優しいなんて…――、

王子様だとしか、考えられない。


――感激。

その一言しかない。

こんな格好よくて、優しい人、初めてだから――…


また涙が、流れてしまった。


「………っっ」

『ぇえ゛っ…!?ど、どうしたの!?何で泣いてるの…!?』


慌てる姿も格好いい。

さすが…王子様だ。


「ごっ、ごめんなさっ…!ぅ、嬉しくてっ…」


伝う涙を拭いながら、私は必死に弁解する。


「こんなっ…大雨の中で…っ…びしょ濡れな私にっ…声、かけてくれて…っ」


…――嬉しかった。

とても、とても。

さっきフラれたことなんてどうでも良くなるくらい、


王子様に会えて、

王子様が声かけてくれて、

王子様に気にかけてくれたことが…――


嬉しかった。





< 6 / 192 >

この作品をシェア

pagetop