誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―
『ぁ、当たり前でしょ?こんな夜に、大雨の中、女の子がこんなところにいたら危ないじゃん。それに風邪引くよ?』
「っっ…ぅう~っ!」
『え゛ぇぇっ…!?ちょっ、また何で泣くの!?』
優しすぎる…
王子様にとっては当たり前のことで、当然なこと。
だけど私には…――
泣くほど嬉しいことなんだ。
だって、そんな風に男の人に優しくされたことなんてないから。
彼氏にだって、そんな風に優しくされたことなんてないの。
王子様が初めてで、王子様だけ――…
私に優しくしてくれた。
『あー…泣かないで?本当にこのままだと風邪引くよ?もう10月だし…、ね?家が遠いなら、俺の家にくればいいし!』
「ぇ」
今……俺の家、とか言った?王子様。
言った!?
予想外の展開に固まる私。
『…うん、俺の家のほうが近いし…家に来よう!よし、行こうっ』
「ぇっ、ちょっ…!」
腕を掴まれて立たされたと思ったら、そのまま前に引っ張られた。
嘘っ…!?
本当に王子様のお家に行くの!?
こんな急展開っ…
しちゃっていいのーーっ!?