【短編】未亡人の彼女と高校生の僕
未亡人の彼女と高校生の僕
彼岸の時期になると、毎年いつの間にか彼岸花が畦道(あぜみち)を赤くする。
猛暑であっても冷夏であっても、彼岸には決まって花を咲かせることに、少し気味悪さを覚えるほどだ。
僕は、学校帰り、田んぼの真ん中をまっすぐ突っ切る道を自転車で走っていた。
車道を走る車は、かなりのスピードで僕の横を通り過ぎてゆく。
果てしなく広がる田んぼと、飽きるほど続くまっすぐな道路。
僕は毎日この道を、一往復している。
ある日の夕暮れ。
辺りに何もないはずの風景に、明らかにいつもと違う風景があった。
女性が、立ち尽くしている。
こんな何もないところで何をしているんだろう。
彼女の周りに自転車や車もない。
バス停から歩いたのだろうか。
とにかくそこにいることが、とても不自然に思えた。
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