【短編】未亡人の彼女と高校生の僕
僕は、とたんに吐き気がした。
僕が恋したのは、狐だったということか。
そんな、馬鹿な。
あまりに悍(おぞ)ましくて、その場から立ち去ろうとした時。
「これからは、ずっと一緒よ」
狐が言った。
「そんなわけないだろう」
顔が引きつった。
「ううん。一緒よ。だから、あなたのお父さんを許してあげたのよ」
「意味がわからない」
そう言った時だった。
水面に映る自分の影に目をやった。
そこには、ぴんとしたひげの狐が一匹、確かに映っていた。
-fin-