《完》シークレット・ティアラ 〜不器用なシンデレラ〜
引かれて足をもつれさせ、
倒れ込むようにしてあたしは
“それ”に乗り込んだ。



(これは―――…!)



「舞踏会の始まりですよ、姫」



初めて聞くような優しい
声が、耳をくすぐる。



誘われるように顔をあげると――
手を伸ばせば触れそうなほど
近い距離に、静かに微笑む
洸さんの顔があった。



「みすぼらしい女も、
魔法があれば変わる。

ま、別に魔法なんて使って
ないけどな。

でもおあつらえむきだろ?」



コンコンと洸さんが叩いた
シートは、多分プラスチック製。



だからこんな音だし、
決して本物じゃないけど。



でもそれは、間違いなく。


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