《完》シークレット・ティアラ 〜不器用なシンデレラ〜
(でもこの距離じゃ、
名前までは見えないな……)



むしろギリギリ顔が見分け
つく程度だ。


この場所からじゃ、やっぱり
確信は持てない。



(でも……似てる……)



忘れたかと思ってた。



でも少しも忘れてなかったん
だってことが、今、記憶を
呼び覚まされてはっきりと
わかった。



(あの人だったら、
どうしよう……)



沸き上がった思いを、慌てて
プルプルと首を横に振って
追い払う。



―――そんなわけないよ。

もう5年も前のことだから、
顔だって変わってる。


それに、東京にいるか
どうかも定かじゃない。


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