ハッピーエンドから始まる物語
「ここにいたのか。」


「……。」



机に突っ伏して寝ている女性に近づき、そっと髪を手で撫でる。


起きる様子のない彼女に、青年はクスリと笑みをこぼす。



「あぁ、まるで日溜まりの姫…いや、楽園の妖精のようだね。」



サラ、と撫でていた女性の髪を払うと見上げてきた彼女と目が合う。


鋭い眼光で青年を射抜くその濃いダークブラウンの瞳は、奥に本人を物語るような強い芯がみえる。



「……寝惚けたこと言ってんじゃねーぞ。」

「寝惚けてなどいないよ。むしろそれは今起きたばかりの君だろう?ああ、起きたのは今じゃなかったかな?」

「……。」

「寝ている君に見とれて思わず言葉に出してしまった…聞こえていたなら恥ずかしいね?」



ニコリと爽やかな笑顔を浮かべるその顔を思わず殴りそうになるのをぐっと堪える。



つーかわざとだろ。
アタシが狸寝入りしてシカトしたからわざと寒気のするようなこと言ったんだろ。



と言ってやりたいが、それを言ったら負けを認めたような気がして悔しいからそれもぐっと堪える。



しかし堪える変わりに不機嫌オーラ満開で目の前の男を睨んでやった。
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