ふるむーん【超短編】
「バカは私だ…」
近くのバス停。
夜中だからバスも来ないし、人もいない。
見えるのはたくさんの星と、佳祐のマンション。
「なんで付き合ってんだろ…」
「好きだから」
「え?」
「愛してるからに決まってるだろ」
「佳祐…」
「なんで、って顔するなよ。お前が出てったのに」
ちょっと息切れしながら私に思いっきり抱き付く。
「だって、写真、撮られちゃうかも」
「大丈夫」
「根拠ない」
「萌となら撮られたい」
「バカ」
「褒め言葉に聞こえる」
佳祐は私を抱き締める力を加える。
佳祐は芸能人。
ドラマもバラエティーもなんでもこなすタレントで、今、人気急上昇している。
「ケンカできる萌が好きなの」
「佳祐…」
「萌がいなくなったら俺、ダメになる」
「嘘だ」
「嘘だけど」
ハハッと佳祐が笑う。
私も、笑いながら佳祐を叩いた。
「ほら、帰ろ」
「うん」
「あ、萌」
「ん?」
「めっちゃ星も月もキレイ」
「そうだね」
「萌の方がキレイだけど」