裏切りじゃない、惚れただけ
「優斗ー、数学の課題終わった?」
あたしは驚くべきことに優斗と同じクラスになった。
腐れ縁というものだろう。
優斗もあたしと対して頭が変わらないので頭を唸らせた。
優斗の新しい友達という高橋が乗り出してきた。
「ありがとう…えっと、高橋くん?」
高橋くんは分かりやすく教えてくれた。
高橋くんはあんまり愛想笑いが得意ではないらしい。
慣れないくんづけに口角を上げた笑顔を張り付ける。
数学の課題も終わり、優斗にある報告をする。
「ねぇ!あたし一目惚れしたかもしれない!どーしよ!」
私が話すのは同じクラスの立岩くんだ。
顔が小さくて背もなかなか高い、端正な顔立ち。
間違いなくクラス1格好いいだろう。
「あぁ、あいつか。まっ、俺には劣るけどなかなかかな。
でも、お前には中西が居るじゃん」
優斗とのいつものやり取り。
「それとこれは別!」
高橋くんに引かれちゃったかな。
軽い女って、まっいいや。
好きにならなそうだし。
あたしと中西は順調に交際が進み、大分クラスにも馴染んだ。
他の男の子とは全然話さなかった。
優斗以外にはどうしても仮面を張り付けるのが面倒だからだ。
女の子にはこれから付き合ってくのにそれは不必要と判断し、素で過ごした。
男の子にまで素で接するほどあたしは外面を気にしない女ではなかった。
あたしたちの交際が半年経った時の席替え。
そう、これであたしは後に[裏切り]と言われる恋の始まり。
ただ、惚れただけのに…。