夏の空~彼の背中を追い掛けて~
私は紀香に手紙を書き、ポケベルを戻して貰った。
「先生…トイレに行っても良いですか?」
教壇へ行きコッソリ告げると、先生は時計を見てこう言った。
「もう少しで授業が終わりますが、それまで我慢出来ませんか?」
えっ!?行っちゃダメなの?
早く事実が知りたいのに!
「無理です!今、行きます」
私は先生の返事を待たずに、勝手に教室を出て、トイレに駆け込んだ。
個室の鍵を閉め携帯とベルを出し、番号を確認しながらボタンを押すと、数回のコールで電話は繋がった。
「もしもし?アンタが真弥?」
電話に出たのは女で、口調からして喧嘩慣れしてる様な印象を受ける。
タイマン張れと言われれば尻込みするかも知れないけど、今はお互いの顔は見えない。
正直、口だけだったら負ける気はしない。
だけど、まだ素は出さずに相手の出方を待とう。
「そうだけど」
私は至って普通の声で答えた。