夏の空~彼の背中を追い掛けて~


私は紀香に手紙を書き、ポケベルを戻して貰った。



「先生…トイレに行っても良いですか?」



教壇へ行きコッソリ告げると、先生は時計を見てこう言った。



「もう少しで授業が終わりますが、それまで我慢出来ませんか?」



えっ!?行っちゃダメなの?



早く事実が知りたいのに!



「無理です!今、行きます」



私は先生の返事を待たずに、勝手に教室を出て、トイレに駆け込んだ。



個室の鍵を閉め携帯とベルを出し、番号を確認しながらボタンを押すと、数回のコールで電話は繋がった。



「もしもし?アンタが真弥?」



電話に出たのは女で、口調からして喧嘩慣れしてる様な印象を受ける。



タイマン張れと言われれば尻込みするかも知れないけど、今はお互いの顔は見えない。



正直、口だけだったら負ける気はしない。



だけど、まだ素は出さずに相手の出方を待とう。



「そうだけど」



私は至って普通の声で答えた。





< 154 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop