夏の空~彼の背中を追い掛けて~
今回はクラスメイトに悟られず、質問に答えられたけど、やっぱりどんなに時間が経っても、そこは触れられたくない。
気持ちが沈みかけ、心のバランスが崩れたのか、再び嘔吐感が襲い掛かる。
「う゛っ………」
「真弥!?どうしたの!?」
紀香が心配そうに私の顔を覗き、背中を擦る。
「ご…めん、大丈夫。あの日の事を思い出したら、気持ち悪くなっただけ…」
多少の違和感はあるものの、嘔吐感は直ぐに消えた。
「心配掛けてごめんね。もう大丈夫だから」
私は若干下を向いた体を起こし、紀香と心配そうに見つめるクラスメイトに笑顔を向けた。
「私達の方こそ、嫌な事を思い出させてごめんね…」
謝りながら、クラスメイトも優しく背中を擦ってくれる。
「有り難う。あっ、そう言えば広川さんの教官“キタロウ”ってあだ名なんだってね」
クラスメイトの中で、心配そうな顔が最後まで消えない広川さんに、私は明るい声で話し掛けた。
「うん、そうなの!直方さんはキタロウ先生を見た事ある?」
「この人かな?と思う先生はチラッと見たけど、正面からはないんだぁ」