夏の空~彼の背中を追い掛けて~
『もしもし、電話してごめん…。どうしても話したい事があってさ…』
「話したい事?」
私には無いんだけど…と思いながらも、漣の声に耳を傾けた。
『広川さんに聞いたんだけど…昨日、自動車学校へ行く前に、気分が悪くなったんだって?』
あっ、なんだぁ。
その事?
「うん…。体育祭の日の事を思い出したら、急に…」
『それってさ…俺が原因なんだよな…。ごめん』
漣は聞いた以上、知らん顔は出来ない性格。
きっと、昨日の会話内容を知り、責任を感じて電話を掛けてきたんだろう。
「謝らなくて良いよ…。もう大丈夫だから」
『ん…それなら良いんだけど……』
本当は、全然大丈夫なんかじゃない。
まだ男の人に対する恐怖心は消えてないし、相変わらず、体が無意識に一定の距離を取ろうとする。
だからと言って、漣を責めてもそれが消える訳じゃないし、私達にはお互い好きな人が居て、もう終わった関係。
これ以上、関わる必要もない。