夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「じゃぁ、また後で」
「うん♪」
玄関で俊ちゃんを見送り、紀香の部屋へ急いで戻った。
そして部屋の窓からバイクに乗る姿を眺めていると、俊ちゃんは直ぐに気付いてくれ、軽く手を上げると颯爽と帰って行った。
部屋に2人だけになると、紀香は昨夜の事を話し出す。
「昨日ね、孝道が真弥に『ごめんと伝えて欲しい』って言ってたよ」
「そう…なんだ」
孝道と言う名前を聞いただけで、心に灯っていた灯りがパッと消え、一気に闇の世界へと変えていく。
昨日は許すって決めたのに、やはり簡単には気持ちの切り替えが出来ない。
時間が経てば、少しは許せているだろうか?
顔を見ても、笑って話せるようになるだろうか?
考えれば考える程昨日の事が思い出されて、恐怖が甦る。
「真弥、顔色悪いけど…横になったら?」
紀香は私の腕を引っ張り、ベッドへと連れて行く。
「じゃぁ、ちょっとだけ借りるね」
多少、気分の悪さがあった為、紀香の言葉に甘えて少しだけ横になった。
暫くして心が安定すると気分も良くなり、私達は1階へ下り、ブランチを済ませた。