夏の空~彼の背中を追い掛けて~
洗い物が終わり2階へ行こうと廊下に出ると、家電が鳴り出し、紀香は居間へと引き返す。
「もしもし、田川です。…あっ、うん。どうしたの?」
廊下へ漏れ聞こえてくる内容から、電話の相手は紀香の知り合いだと分かる。
私も居間へ行こうかと思ったけど、紀香にもプライバシーがあるので、一足先に2階へ上がり待つ事にした。
「真弥、ごめんね」
程なくして、紀香が部屋へ戻って来る。
「電話はもう良いの?」
「う…ん。特に用事があって掛けて来た訳じゃなかったから…」
明るく答えてはいるけど、今の電話を境に、紀香の様子が少しだけ変わった気がした。
誰からだったんだろう?
凄く気になるけど、聞かない方が良いような気もする。
あっ!そうそう。
気になると言えば、フッとした瞬間に昨日の事を思い出した時、アレッ?と思った疑問がある。
確か紀香の家に来る時、バスの中をパッと見渡した限り、見知った顔はなかった気がする。
「紀香。昨日、バスに孝道君は乗ってなかったよね?」
「うん、乗ってなかったよ」
そうだよね?