夏の空~彼の背中を追い掛けて~
どうしても塞いだ手を放して欲しいのか、今度は肩をツンツン突いたり腕をユサユサ揺すったりしてくる。
だけど1度植え付けられた恐怖心は、簡単には解けない。
私は小さくなって、ただただ怯えていた。
すると暫くして誰かが隣に座り、肩を抱くように体を擦る。
上下にゆっくりゆっくり労るような優しい撫で方が『大丈夫だよ』と言うように、硬直する体を解きほぐす。
もう怖くない。
そう思えた時、塞いだ耳も目も暗い闇から解き放たれた。
目を開けて真っ先に飛び込んで来たのは、正面に座っている孝道君。
体がビクンッと大きく跳ね、再び目と耳を塞ごうとする手を、隣から掴み阻止される。
えっ……!?
「俊…ちゃん!?」
私を優しく包み込んでいたのが俊ちゃんだと分かり、一気に安心感が広がる。
「ノンちゃんから直ぐに来てって連絡もらって、急いで来てみたら…」
ギロッと威嚇するような鋭い眼光を孝道君に向け、俊ちゃんは言葉を続ける。
「孝道!何でお前がここに来てんだ!?真弥の気持ちも考えろって言っただろ!?」
「考えたさ。悪い事したなって反省もした。だからこそ、直接謝りたいって思ったんだ」
俊ちゃんはハーッと溜め息を吐き、私と手を繋いだまま向かい合わせに座り直す。
すると正面に座る孝道君は死角で隠れ、大好きな人の顔だけを捉える事が出来る。