夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「真弥、大丈夫!俺も一緒に居るから、孝道の話を聞いてやってくれる?」
「うん…」
小さく頷くと、俊ちゃんは私の視線と合わせてくる。
今にも唇が近付きそうな距離に、もどかしさと恥ずかしさが交差する。
近付きたい。
この距離を縮めたい。
私の意識全てが俊ちゃんへ集中した頃、孝道君は静かに話し始めた。
「真弥ちゃん昨日の事…ごめんじゃ済まないと思うけど…本当にごめん…」
苦しそうな低い声に、申し訳ないと言う気持ちが伝わってくる。
きっと孝道君なりに、色々悩んだと思う。
『うん、分かった。昨日の事はお互い忘れよう』
そう答えたら、きっと孝道君はもう心を痛めなくて済む。
俊ちゃんと紀香にとって、孝道君は幼なじみ。
私が許してあげなければ、3人の仲までもを壊してしまうかも知れない。
そんな事したくない!
したくないけど、今はまだ無理。
「ごめんね、孝道君…。もう少し時間頂戴。きっと時間が経てば大丈夫だよって言えるようになると思うから…」
それが私に言える、精一杯の言葉だった。