夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「ゴムを着けなければ、妊娠する可能性がある事は知ってるよな?仮に真弥が今、妊娠してなかったとして、昨日の行為が原因で、もし孝道の子供を妊娠したら、お前どうする?」
「どうするって……」
「堕ろせって言う?」
「それは……」
孝道君は何も答えられず、黙ってしまった。
それもそうだと思う。
自分がその人の立場に立った時、初めて分かる命の重さ。
どんなにそう願っていても、簡単に罪を犯すわけにいかない。
「俊ちゃんはどうなの?真弥ちゃんとする時、ちゃんとゴム着けた?」
「…俺も着けてない。だけど少なからず、心の何処かではこうなる事を分かってたと思う。だから体育祭の時も昨日も▽※〒…」
俊ちゃんは言い難そうに、最後の言葉を濁したけど、何を言いたいか私には分かった。
「じゃぁ、俊ちゃんが俺の立場だったらどうする?彼女じゃない人を妊娠させて、可哀想だから一緒になるって言ったらなんて言う?俺と同じ事言うんじゃない?」
「俺らは付き合ってる!それに可哀想だからって思った事もない!」
「えっ…いつから付き合ってんの!?」
俊ちゃんと孝道君の討論はいつまでも続き、終わりが見えて来ない。
私も紀香も、ただジッと2人のやり取り見守るしかなかった。
だけど、ある人物の登場で、討論は終わる。