夏の空~彼の背中を追い掛けて~
『何を話してるの?』
『外は寒いから、中で話したら?』
そんな風に、そこへは行けない雰囲気が感じられる。
きっと私達には聞かれたくないからこそ、外へ出たんだろう。
そう思ったら見るのも悪い気がして、私は椅子に座り、俊ちゃんが戻るのを待つ事にした。
「真弥ちゃん、体調はもう良いの?風邪でも引いてるの?」
何も知らない隆明君は、言葉を掛けながら徐々に私との距離を縮める。
その瞬間ゾゾゾゾッと寒気が走り、私は咄嗟に椅子を飛び降りて、傍に立っていた紀香の背中に身を隠した。
「真弥、大丈夫!?隆明!こっちへ来ちゃダメ!!ドアの前まで下がって!」
紀香が私を背に隠し、隆明君に向かってそう告げるも、首を傾げて尚も近付く。
「イヤ!イヤ!隆明君、お願いだからこっちへ来ないで!!」
紀香の服を引っ張りながら、私はどんどん後ずさる。
「真弥、そんなに引っ張ったら危ないよ!?私……ワッ!!」
バランスを崩した紀香が、私の上に被さるように倒れてくる。
だけど咄嗟に、孝道君が紀香を捕まえてくれた為、大事に至る事はなかった。
「危なかった…。真弥ちゃん無事?」
孝道君の問い掛けに、私はコクコク頷く事しか出来ない。