夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「色々と悩む事も考える事もまだまだ沢山あるけど、俺は真弥と同じ苦しみを共有したいんだ…」
「俺…俊ちゃんには勝てないって分かった。傍でって訳にはいかないけど、俺に出来る事があったら何でも協力するから!」
孝道君の言葉に、険しい顔をしていた俊ちゃんの顔が穏やかになる。
「有り難う。さて、真弥も落ち着いたし行くか!」
俊ちゃんは私を立たせて厚着をさせると、ギュッと右手を繋ぐ。
「俊ちゃん、これから何処行くの?」
外に出る事は私にも分かる。
だけど行き先は分からない。
「俺んち。迎えに来て直ぐ、連れて行くつもりだったけど…」
チラッと皆に視線を向けた後、私の耳元でこっそり囁いた。
「もう限界。早く真弥に触れたい。良いだろ?」
「うん。私も俊ちゃんにいっぱい触れたい」
「じゃぁ決まり!孝道、悪いけどバイク貸して?」
俊ちゃんはズボンのポケットから鍵を取り出すと、孝道君目掛けてそれを投げる。
上手くキャッチした孝道君は俊ちゃんと同じように、ズボンのポケットから鍵を取り出すと、俊ちゃん目掛けて投げ返した。
「サンキュー!ノンちゃん、悪いけど…」
「何かあったら連絡して!でしょ?大丈夫だよ、任せて!」
「有り難う。じゃぁ行って来る」
私と俊ちゃんは、皆に頭を下げて部屋を出た。