夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「やっと面と向かって好きって言えるんだもん♪俊ちゃんは嬉しいんだよね♪」
そう語りながら、紀香は嬉しそうに私達を見つめる。
だけどそれが何だか照れ臭くて、私は1人だけ明後日の方向を向いた。
すると今度は、ポケットの中のベルが震え出す。
それはタイムリミットを知らせるメッセージ。
《イマカライエデル チチ》
私は俊ちゃんにそれを見せ、身支度を始めた。
「俺も店まで一緒に行く!」
そう言うと、俊ちゃんは直ぐにでも出られるように席を立つ。
「えっ!?有…り難う。凄く嬉しいけど、紀香と2人で行くから、俊ちゃんは皆と一緒に居て?」
本当は、迎えが来るまで俊ちゃんと一緒に居たい。
だけど、父に突然紹介する勇気はないし、男の人に会う為に紀香の家にお泊まりしてた事がバレたら、もうそれさえ出来なくなる。
そうなると、俊ちゃんに会うのも難しくなる。
だから、今はまだ知られたくない…。
不愉快な思いをさせたかも…と思いながら、私は紀香とお店屋さんへ向かった。
「紀香にはこの2日間、色々と迷惑掛けちゃってごめんね」
父が来る迄の間、ここで過ごした時間を振り返る。
紀香が倉庫の事を伝えなければ、私はあのままもっと酷い辱しめに遭っていたかも知れないし、俊ちゃんに妊娠の告白も出来なかった。