夏の空~彼の背中を追い掛けて~


「また会いに来るから」



こっそり耳元でそう告げると、俊ちゃんはバスに乗り込む。



静かに発車したそれを見送った数分後、私達は送迎バスに乗って自動車学校へ向かった。



途中で、俊ちゃんのお父さんが経営する、自動車整備工へ歩いて向かう姿を見付けた。



窓を開けて『頑張ってね』と声を掛ける事も、手を振る事さえも出来ないまま、瞬間的に通り過ぎる姿を見るだけで精一杯。



私は携帯を取り出し、伝えられない言葉をメッセージで送った。



【アイニキテクレテ】



【アリガトウ】



【バイトガンバッテネ】



【マヤ】



自動車学校へ着き、受け付けへ向かう途中に、その返事が返って来る。



《マヤモガンバレヨ》



《シュン》



仮免に無事合格し、後は路上試験と本験を残すのみ。



だけど、中々道が覚えられなくて、頭はパンクしそう。



無事に免許が取れるのか不安になるけど、俊ちゃんに『頑張れ』と言われたら、不思議とヤル気も湧いてくる。



【ウン♪ガンバル!】



受け付け前の公衆電話からメッセージを送り、紀香と一緒に休憩室へ移動した。





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