夏の空~彼の背中を追い掛けて~
少しずつスカートの中へ侵入しようとする陽人の手を、必死に抑え込みながら、私は抵抗を続けた。
すると陽人は『チッ』と舌打ちをして、不満げに手を離す。
諦めてくれた?
良し!今の内にここを離れよう!!
パパッと荷物を持ち、席を立った途端、陽人にガシッと腕を掴まれ、強引に引っ張られた。
「キャッ!!」
突然の事でバランスを崩し、手に持っていた教科書が散乱したけれど、幸い転倒は免れた。
良かった…。
赤ちゃんに何もなくて…。
私は、床に落ちた教科書を拾う為、掴まれていない方の手をそこへ伸ばした。
すると誰かがサッと広い集め、汚れを叩いてくれる。
「直方さん、ちょっと外まで来て!」
スッと立ち上がり、拾った物を差し出したのは広川さんだった。
「ごめんね、直方さん連れて行くけど、貴方は来ないでね!!」
そう陽人に言い放った広川さんの声は、誰が聞いても怒っていると分かる。
そりゃぁそうだ!
沢山の人が集まる中で、こんなやり取りをされたら誰だって迷惑だし、不愉快に思うもの。
何を言われるのかドキドキしながら広川さんと外へ出ると、人気の少ない場所へと連れて行かれた。