夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「一時期に比べたら恐怖心は無くなったけど、広川さんの言う通り。男の人が…怖い」
「やっぱり、そうだったんだね…」
広川さんは納得したような顔を浮かべたまま、それ以上の追及はしてこなかった。
「話したくない事もあるだろうし、事情は聞かない。でも私に出来る事があったら、いつでも声掛けて良いからね?」
広川さんの暖かい言葉に、心がジンワリと熱を帯びる。
「有り難う。男性恐怖症はかなり落ち着いてたんだけど…陽人はしつこいし、行動もエスカレートし始めるし…。怖かった……」
フッと緊張の糸が切れ、私はヘナヘナと地面に崩れ落ちた。
「直方さん!大丈夫!?」
「うん。広川さんが凄く良い人だから、安心して力が抜けちゃった」
ヘヘッと笑って見せると、広川さんは心底安心したように、クシャッと笑う。
「そろそろ田川さんが戻って来るから、休憩室へ行こ?」
休憩室かぁ…。
きっとまだ、陽人が居るよね…。
ちょっと怖いな……でも…。
「そうだね…紀香が戻って来るから、そこに居なくちゃね…」
そう分かってはいるんだけど、陽人に何かされたり、言われたりするのでは?と思うと気が重く、立ち上がったまま足が動かない。
だけど、ずっとここに居る訳にはいかない。