夏の空~彼の背中を追い掛けて~
少しでも役に立てる事があるなら、私は傍に居たい。
「真弥は…家で待ってて。話が終わったら、俺が会いに行く」
俊ちゃんには俊ちゃんの考えがあり、そう決めたのなら私は従おう。
「分かった…。待ってる」
ソワソワと落ち着かない日々を過ごし、漸く週末を迎えた。
お昼過ぎ、携帯の着信音が部屋の中に響く。
ディスプレイには“俊ちゃん”の文字が表示されている。
まるで入試の合否を知らされるようなドキドキ感に襲われながら、私は通話ボタンを押した。
「もしもし」
『真弥…ごめん。やっぱり今日は行けない…』
電話の向こうの声はとても暗く、反対されたんだと容易に察しがつく。
でもそれは、初めから分かっていた事。
何て言われたんだろう…。
反対された理由は、まだ高校生だから?
聞きたい事は色々ある。
だけど今の俊ちゃんが、どれ程のダメージを受けているのかと思うと、簡単には聞けない気がした。
長い沈黙だけが過ぎ行く中、俊ちゃんは少しずつ話を始める。
『朝起きて…何度も躊躇いながら、母親に“真弥が俺の子供を妊娠してる”って伝えた…』
それを言うのに、俊ちゃんはどれ程の勇気を出してくれたんだろう…。