夏の空~彼の背中を追い掛けて~


『物凄く驚いた顔をして、真弥の事も色々聞かれた。そして産むのか産まないのかも…』



俊ちゃんは、2人で話し合った事をお義母さんに伝えたらしい。



『“親になるのなら専門学校は諦めて、就職して直ぐにでも入籍しなさい”そう言われたよ』



えっ!?



「俊ちゃんのお母さんは『子供は諦めなさい』って、反対しなかったの!?」



『避妊しなかった俺に責任あるし、もし子供を諦める事になったら、真弥の心と体に傷を付ける事になるからって…』



お義母さんはきっと親目線ではなく、女の目線でそう言ったんじゃないかな?



まだ生活力もない子供同士が親になるとなれば、息子の親も娘の親も、大半は反対するだろう。



だけどお義母さんは、反対しなかった…。



本当は、色々と言いたい事も沢山あるはず。



でもその中で、好きな人の子供を産みたい女性の気持ちと、親としての責任を最優先して、そう言ってくれたんだと思う。



『俺…整備士になる事しか考えてなかったから、就職しろって言われても、やりたい仕事が分からない…』



私も切なくなる程、俊ちゃんの声から苦悩を感じる。



初めて出会った日『整備士になるのが夢なんだ』と語っていた俊ちゃんは、眩しい位に輝いていた。



でも親になるには、その夢を諦めなければいけない。



逆に夢を叶えたければ、子供は諦めなければいけない。



俊ちゃんにとっては一生を左右する、人生の大きな分かれ道。



浅はかな考えで、自分の意見を言う訳にはいかない。





< 292 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop