夏の空~彼の背中を追い掛けて~
『物凄く驚いた顔をして、真弥の事も色々聞かれた。そして産むのか産まないのかも…』
俊ちゃんは、2人で話し合った事をお義母さんに伝えたらしい。
『“親になるのなら専門学校は諦めて、就職して直ぐにでも入籍しなさい”そう言われたよ』
えっ!?
「俊ちゃんのお母さんは『子供は諦めなさい』って、反対しなかったの!?」
『避妊しなかった俺に責任あるし、もし子供を諦める事になったら、真弥の心と体に傷を付ける事になるからって…』
お義母さんはきっと親目線ではなく、女の目線でそう言ったんじゃないかな?
まだ生活力もない子供同士が親になるとなれば、息子の親も娘の親も、大半は反対するだろう。
だけどお義母さんは、反対しなかった…。
本当は、色々と言いたい事も沢山あるはず。
でもその中で、好きな人の子供を産みたい女性の気持ちと、親としての責任を最優先して、そう言ってくれたんだと思う。
『俺…整備士になる事しか考えてなかったから、就職しろって言われても、やりたい仕事が分からない…』
私も切なくなる程、俊ちゃんの声から苦悩を感じる。
初めて出会った日『整備士になるのが夢なんだ』と語っていた俊ちゃんは、眩しい位に輝いていた。
でも親になるには、その夢を諦めなければいけない。
逆に夢を叶えたければ、子供は諦めなければいけない。
俊ちゃんにとっては一生を左右する、人生の大きな分かれ道。
浅はかな考えで、自分の意見を言う訳にはいかない。