夏の空~彼の背中を追い掛けて~
母も俊ちゃんの両親も流産するんじゃないかと、ハラハラしている様子だったけど、私自身が落ち着けばお腹の痛みも治まる。
『ママはもう大丈夫だから、赤ちゃんも泣かないで…』
『大丈夫よ』
『大丈夫』
まるで自分に暗示を架けるように『大丈夫』を繰り返すうち、お腹の痛みもスーッと引いた。
「もう…大丈夫です。心配掛けてすみません」
私は比較的明るい声でそう言ったけれど、皆の顔は不安気に満ちている。
「真弥、本当に大丈夫なの?今からでも病院へ行く?」
「もう痛くないから、大丈夫だって!!」
「本当に大丈夫なのね?」
「うん」
念押しするように母が何度も『大丈夫?』と訪ねるのは、心の底から赤ちゃんを心配しての事。
改めて、出産する事を許してくれているんだと実感でき、葬儀の場で不謹慎だけど、嬉しい思いで心が暖かくなった。
「真弥、そろそろ帰ろうか?」
もっともっと俊ちゃんの傍に居たいけど、これ以上皆に心配を掛ける訳にはいかない。
私は仕方なく母の言葉に頷いて、この日は帰宅した。
翌日、母は仕事を休んで、告別式へ連れて行ってくれた。